psi 力ある者 愛の行方 


「はよ。惣領」

隣のクラスの泉絖太が、ニコリと挨拶をしてきた。

真っ白い歯と、サラサラの黒髪の間から覗く黒目がちな瞳。
耳のピアスが朝日に光っている。

「そこ、私の席なんだけど」

当たり前のように私の席に座っている泉へ、毎朝のことながら言わずにはいられない。

「知ってるよ」

口角を上げ、極上のスマイルを私に向けてくる。

これも毎朝の事……。

私の席と理解していても、泉はなかなかそこをどいてはくれない。
泉は、椅子に座ったままで目の前に立つ私を見上げている。

そもそも、どうして隣のクラスの泉が、毎朝うちのクラスに来ているのかが疑問だ。
一向によける気配のない泉に、私の表情は当たり前の如く曇っていった。

「あ~あ。眉間、スゲーしわ」

嘆かわしいとばかりにそう言うと、座っていた泉がすっと立ち上がり、手がグッと私の顔へと伸びてきた。
どうやら、私のつくった眉間のシワを伸ばそうというらしい。
近づく泉の指から迷惑な顔をして咄嗟に身を引くと、少し膨れた顔をしてみせる。

「いーから、早くどいて」

指を避けられ不満顔をしている泉だけれど、私は構わず冷たく接した。

「はぁ~い」

すると、気のない返事でやっと泉が席を立つ。

これも毎朝の事。

これって恒例行事なわけ?


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