psi 力ある者 愛の行方
陸の部屋の前で、ドアをノックして数秒待ってみた。
けれど、中からは物音ひとつしない。
ん?
まだ、寝てる?
「入るよ」
一応、声を掛けドアノブを捻り、中を覗いてみる。
窓際に置かれたベッド。
その布団が、人型にこんもりと盛り上がっていた。
布団の中に、しっかりと潜り込んで寝ている陸へ声を掛ける。
「陸、朝だよ」
まずは、一声。
「……んん……」
くぐもった声が微かに聞こえてくる。
けれど、それだけ。
「りーく。朝」
二度目のそれにモゾモゾと動く布団。
けれど、少し動いてそれだけ。
むむ。
これは、なかなか手強いかも。
「陸。学校、遅れるよっ」
三度目は、布団の上から身体をゆすった。
そこでやっと布団から半分出た顔は、とても眠そうなぼんやりした表情だった。