幸せいっぱい
家に帰るとおじさんとおばさんはまだ仕事で、日向だけが先に帰っていた。

「おかえり。」

「ただいま。」

日向はコップに水をいれている。

「日向。そういえばさ。」

「ん?なに?」

日向は水を飲みながら話を聞いている。

「…なんで、学校でチラチラこっち見てたの?」

言った瞬間に日向はコップを机に勢いよく置いた。

…⁉えっ⁉なに⁉顔すっごく怒ってる⁉

「…なに?怒ってるの…?」

「いや、別に?」

日向は自分の部屋に行ってしまった。

…なんだったの。

私は少し心配になり、お菓子を持って日向の部屋をノックした。

「…日向。一緒にお菓子食べたい…。」

しばらく返事がなかったが、日向は入れば…?と返事をくれた。

「…うん。入る。」

扉を開けると日向は机で勉強をしていた。

「日向…邪魔した?」

日向は眼鏡をはずして少しわざとらしく背伸びをしてみせた。

「いや。ちょうど目が疲れてきたから休憩しようかと思ってた。」

「…ふーん。」

本当に嘘つくの下手だな…。

勉強ってまだ、さっき部屋に入ってから30分もたってないし休憩にしては早すぎる。

それに…髪の毛触る癖…でてるし。

「……。」

「…………。」

なんにも喋ることがなくて困るなぁ…。

「日向が眼鏡外してる姿…あんまり見ないから別の人みたいで緊張する…」

…あれ?私、急に何言って…。

緊張してるのか…?ん…?あれ…

「そう?モア吉、緊張したりするんだ。」

「えっ⁉なんでその名前を…⁉」

日向はズボンのポケットから小さく折りたたんである手紙を取り出す。

「掃除の時間に落ちてて見つけた。友達からだろ?落とすなよ。」

日向は私に渡してくる。

「あ…あの、ありがと。気づかなかった。」

私はその手紙を受け取ろうと手を伸ばす。

すると、ひょいっと背の高い日向は手紙を上へあげた。

「わっ⁉なにするの…」

バランスを崩した望夢は足をくじいて転けそうになった。

日向はすぐに転けないように背中を支え自分のほうへ望夢を寄せた。

「…!びっくりした…。ありがと。」

「ありがと。じゃねぇよ。今のは俺が悪かった。ごめん。」

素直に謝る日向をみて私は、じゃあ許さない。と答えた。

すると、日向はなんでだよ。と私の鼻をつまんだ。

「日向、痛い。」

すると日向は私の顔をみて少し笑った。

「…面白い通り越してちょっと可愛いかも…。」

日向の言ってる日本語がよくわからず何それ?離して。とひたすら鼻をつまんでいる腕を軽く叩く。

やっと離してくれた日向を少し涙目で睨む。

すると日向は私の頭に手を伸ばしいいこいいこと優しく急になでる。

……。

「日向のすることはよくわからない。」

「あっそ。」

日向は私の顔を真剣にみた。

「…望夢。好きなやつとかいんの?」

急に聞いてくる日向に少し驚いた。

「え?…いないよ?なんで?」

「今日、クラスのやつが望夢が可愛いって話してたんだ。」

「え⁉…私のこと可愛いなんて…よっぽどの物好きだね…?」

私は少し笑ったけど、日向は笑ってくれない。

「望夢が可愛いのなんか10年前から俺が1番知ってるんだよ。なのにあのバカ。急に望夢が好きとか可愛いとか言い出しやがって。ムカついたから半殺しにしといた。」

急に少しイライラしながら早口で喋りだす日向に私は戸惑った。

「え…それどういう…てか、半殺しってそれダメだよ…?」

「わかれよっ!バカっ!」

ドンっと手を壁につき、私が逃げられないような姿勢にされている。

これがリアル壁どんかー…。確か前、漫画でみたなぁ…などと呑気に考えている私は本当にバカなのかもしれない。

「10年も一緒にいるんだ…そろそろ気づけよ。家族だからって必死に我慢してきたけど…俺。お前の事が……。」

…すごい。少女漫画みたいだ…!

「……。」

「…………。」

え…?なに、この沈黙…。

「…なーんて。少しからかってみたくなった。どう?少しドキドキした?」

日向は私の顔を余裕って顔でニヤリと笑い覗き込んでくる。

「…!」

日向は笑っている。

「仕方ないだろ。こうでもして少し怖がらせないと、望夢も危機感もたないで俺の部屋にずっと来るし…俺だってお前になにかしちゃうかもしれないからな。年頃の男女があんまり一緒にいちゃいけないんだよ。」

……。

そっか。日向は自分を悪者にしてまでこうして俺に近づくな。って警告してくれてるんだ…。

そんなに、欲求不満なのか…!

ひとまず安心して、そっか。ごめん。と部屋をでた。

あれ…?でも…日向。

笑ってるとき髪の毛触ってたような…

……?気のせいか…。

私はなにも考えずにお風呂にはいることにした。
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