幸せいっぱい
お風呂から上がるとおじさんとおばさんは帰っていた。

「…おかえりなさい。」

2人とも私を見ると笑顔になった。

「ただいま。」

「お風呂に入ってたのね。今ご飯作ってるから。待っててね。」

でもその笑顔は一瞬だけ。

……。

この家にきて一度だけおじさんとおばさんが喧嘩しているところをみたことがある。

でもそれは日向にはずっと内緒にしている秘密ごと。

おじさんとおばさんは私のことで喧嘩をしていたからだ。


なんで、うちがあの子を引き取らなきゃいけないんだ⁉

仕方ないじゃない!私たちがみてあげないとあの子は1人なのよ⁉

母親は生きてるだろう⁉

母親が引き取りにこないんだから仕方ないじゃない⁉離婚して家をでた。って報告を聞いてから一度も連絡をとってもいないし…もぅ…気が狂いそうよ。ガミガミ私に怒鳴らないで!!


……気が狂いそうになる…か。

あまりにもまっすぐで正直すぎる言葉に涙さえも出なかった。

まだ幼い私だったけど、言葉の意味は嫌でも心に突き刺さる。

今でも目を合わせるとおじさんとおばさんはなんにも喋っていないのに…笑顔を向けてくれるのに…「いつまでこの家にいるの?」と聞こえているような気がして怖いんだ。

自分はどうしてこんなにも…ちっぽけでなんにもできないんだろう。

いつだって1人ではなんにもできない。

はやくこの家を出て…少しでも恩返しをしないと行けないのに…。

私は部屋に戻り無気力にベッドへと倒れこんだ。



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