チャンスの神はここにいる

「一回……整理しよう」

亮平君は穏やかにそう言い
ブランコから降りて私の顔を覗き込む。

悪意のない
澄んだ子供のような瞳。

「メグちゃんはリストラ候補かもしれないけど、決定じゃないから、あきらめず粘る事」

先生に言われたように
私は素直にうなずく。

「できれば巨乳キャラだけじゃなくて、何か欲しい。新しいプロデューサーに媚びれとは言わないけど、逆らわず自分の個性を何か出して、番組に残って欲しい」

「個性ないもん」
ボソッとつぶやいたら

「田舎に帰れ」と純哉君に冷たく言われたので、またムカつく。

「純哉やめろ。俺はメグちゃんの笑顔が好きだから、いつもニコニコ癒し系で頑張って欲しい」

「うん」

自分に自信のない時
ウソでも褒めてもらえると
倒れず立っていれそう。

「送ってく」

さりげなく私の頭を撫で
今日は取られる前に自分の自転車をゲットし「送ったらそっち行く」って純哉君に言う。
だから私もブランコから立ち上がると

「ネタ見てくれて、ありがとう」

帰り際
純哉君に言われて
ちょっと戸惑う私。

笑ってはいないけど
切れ長の目は、眼鏡の奥で優しく私を見ていた。

「根性あるし顔も可愛いから、自信持て」

さっきまでの勢いはどこえやら
ボソボソとした小声で私に言い

逃げるように
早足で
私の目の前から彼は去る。

「最上級の褒め言葉もらったね」

亮平君が楽しそうにそう言った。

あれが最上級?

顔もいいし
きっと頭もいいけど

わかりずらすぎるヤツ。

でも
嬉しかった。

ありがとう純哉君。
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