完璧上司は激甘主義!?
大高さん……。

そっと私の肩を掴んでいた手を離したものの、大高さんの視線は私に向けられたままだった。

「まずは仕事のパートナーにさせて下さいね」

そう話す大高さんの表情が今にも泣き出しそうなほど、悲しみに覆われていて私はただ、頷くことしかできなかった。


どうして大高さんが私のことを、想ってくれているのかなんて全然理解できない。
それにあんな賭け、賭けをやるまでもなく結果など分かり切っていることなのに……。

それでも頷いてしまったのは、最後にもう一度夢を見たかったからなのかもしれない。
もしかしたら南課長は、大高さんの言うように少しだけでも私のことを、意識してくれているのかもしれないと。

そんなわけあるはずないのに、まるで大高さんの言葉には魔法がかかっているかのように、信じてみたくなってしまったんだ。


だけどきっとこの賭けが終わったら、間違いなく私は南課長のことを吹っ切らなくてはいけない。……ううん、きっと吹っ切ることが出来るはず。

だから最後にもう一度だけ夢をみさせて下さい――……。
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