別れ道
「っありがとう…」
嗚咽を漏らしながら慧を見つめる。
「子供の名前、考えてくれてたんだね…っ」
…呼び方も、二人の間の空気も。全てが変わってしまっていたと思っていた。
でも、変わっていなかったこともあった。
それが加奈子には嬉しくて堪らなかった。
「奏、かぁ…」
「…加奈子の、“かな”も入ってる」
嗚咽が一瞬止まる。
今、慧は確かに言った。
“加奈子”と。
かなこ。かなで。
耳がくすぐったくなって、加奈子は微笑む。
慧に名前を呼ばれたのも、笑顔を見せたのも十年振りだった。
