私は彼に愛されているらしい
一応お金の準備はしてきたけど…足りなかったらカードで払えばいいかな。

何食べても満足できそうな気がするし、そう考えたら楽しみでお腹が空いてきた。

「こっちです。」

繋がれたままの手を引っ張って竹内くんが歩き始めた。不思議なもので意識が食事の方に向いてからはこの状態もあまり気にならなくっている。ああ、いい匂い。

「このスペインバルはよく行くんですよ。」

通り過ぎる時に竹内くんが教えてくれた。少し見えた店内には天井から大きな骨付き肉がぶら下がっていたような気がする。クリスマスに食べるようなチキンの大きい版に思わず口が開いた。

「興味あります?」

「うん、行ってみたい。」

「じゃあ次はそこにしましょう。」

「本当?やった!」

素直に喜んでしまった後に気が付く。今さりげなく次の予定を組まなかったか?これって竹内くん曰くNGなんだよね。でもこの前みたいに怒る素振りは全くなかった。

今のってセーフなの?

「着きましたよ、ここです。」

そう言われて立ち止まったのは創作フレンチのお店だった。全体的にダークブラウンで落ち着かせた店構えはやはり高級さを感じさせる。

それと同時に料理レベルの高さも期待させて嬉しくなった。絶対美味しい予感がする。

「行きましょう。」

竹内くんは手を離して私の腰辺りに移動させた、これってつまりはエスコートよね。

一段と近くなった距離に思わず肩が跳ねて強張らせてしまった。でもそれは気付かれなかったらしい、竹内くんは何事も無いようにそのまま店内に足を進めていく。

「いらっしゃいませ。」

「予約していた竹内です。」

「竹内様、お待ちしておりました。どうぞこちらへ。」

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