私は彼に愛されているらしい
女性といっても同じ人間、残業続きという同じ様な生活リズムを送っていたら食事だって作るより買って帰る方が多いだろう。だから何回か作ってもらった料理は何というか、大味だった。

同じものでも毎回味にバラつきがあって、料理を作り慣れていない感じが伝わってくる。それでも味の好みが同じなので特に気にならなかった。

掃除もこまめにやる方じゃない、それは俺も同じ。でもきっとみちるさんは掃除が苦手なんだろうなと思う、彼女の部屋を見て直感的に思ったが俺の方が上手そうだ。

色々な感情を持って知ったことはあっても、不思議と嫌だという感覚は生まれなかった。ずっと一緒に居ても苦痛を感じることはない、干渉をし過ぎることは無いし大いに自由で居させてくれる。

こんなことは初めてで少し戸惑ったくらいだ。

そして彼女の口癖が「ありがとう。」だということも嬉しかった。

ごめんという謝罪よりも感謝の言葉を選んでくれることはこっちとしても気分が楽で肩の力を抜ける。多少の束縛は覚悟していたけど、彼女なりの束縛は俺にしてみれば自由の範囲内で驚いた。

そんなことをみちるさんに言おうものなら「束縛ってなに?」とか聞かれて紐とか探しそうだし。更にはどの辺を縛ればいいとか聞かれそうで本気で怖い。

「アカツキくんは眼鏡かけると顔変わるよね。」

普段はかけない眼鏡をすると彼女は嬉しそうにそう言ってくれる。

「かっこいい。」

どうやら男らしさや凛々しさが2割増しになるらしい。その数字の適当さ加減に呆れたこともあったが、慣れてくればそれも愛らしく思えて適当に褒め言葉として受け取ったり聞き流すようになった。

俺も少しずつだが清水みちるという人に慣れていってる証拠だよな。

最初に予感した通り掴むまではかなり振り回されたり苦労もしたが、この3か月の間に費やした時間は決して無駄ではなく価値のあるものだと思ってる。

逃したくない、浮き合う前からそう感じた俺の本能は当たりだった。

性格の相性も体の相性もいい、言うことなしの素晴らしい女性に出会えたと思っている。そしてそんな女性をものにした自分自身も偉いと思ってる。

運転しながらそこまで考えて昼間のことを思い出した。

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