私は彼に愛されているらしい
「因みにみちるさんの周りでいうと、片桐さんと吉澤さんは気付く人で持田さんは気付かない人。あ、みちるさんも気付かない人ね。」

「えっ?舞さんってそうなの?」

「あの人もかなりの敏感だよ。相当アンテナ張ってんじゃない?何聞いても誰がどんな人か返ってくるから悩んだら聞いてみるといいよ。」

声も無く、驚いた口の形をしたまま息を吸い込んだみちるさん。おそらく俺の言葉を自分なりに噛み砕いて消化してくれているんだろう。

俺が知ったみちるさんのいいところの1つだ。

彼女は相手を否定しない。まず聞いて、分からないところがあればその都度理解しようと尋ねてくれる。

向き合ってくれているんだって伝わってくるんだ。

そして迂闊に可哀想だとか大変だとか、安易な軽口は叩かない。自分のことは他人事なのに、いざ人のことになるとちょうどいい加減で親身になってくれる。

どういう機能か知らないけど、本当それにはいつも感心させられるよ。

「多分俺だけじゃないと思うんだけど、気付く人ってさ…気付いてしまう分、自分が助けてやらなきゃって気持ちになるんだよね。だって相手が何をしてやったら一番喜ぶかを気付いちゃってる訳だからさ?」

少しひっかかるところがあったのか、みちるさんは疑問を持つような表情をしたがすぐにそれは解消されたらしい。

「うん、そうだね。」

「だから…自分の為に生きられないんだ。」

「うん?」

さすがにこれは行き詰ったらしい。思いきり眉を寄せて難しい顔で固まってしまった。

「誰かの為に働いたり、誰かの為に動いていないとね。この人には俺が必要だ、俺はこの人の役に立ってるって、そう思いながら生きてる。」

重いだろうか。でも俺は昔からこの思いでやってきた。

今でも無駄に周りが気になって気付きすぎる自分に嫌気がさすし疲れるけど、無視して関わらないようにするというのも出来なかった。

俺が助けてやらなきゃ。俺が守ってやらなきゃ。

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