私は彼に愛されているらしい
「仕事でも、もちろん私生活でもね。」

そんな思いでいたが為に、昔、恋人になった女の子を駄目にしてしまったこともあった。誰かの支えなしには生きていけない、そんな弱い人間にしてしまったことは消えない後悔だ。

その経験を踏まえて俺は恋愛にはタンパクに、薄情になるようになった。

喧嘩しようものなら別れる。面倒だと思ったら別れる。

どうやったら相手を宥められるかなんてすぐに分かるし、相手を気分良くしたまま付き合える方法だって
お手の物だ。でもそれをすると相手はどんどん駄目な人間になっていく。

俺という存在に依存してしまうんだ。

でも俺は誰かを支えていかないとうまく生きていけない。矛盾しているよな。

だから最近は適度な恋愛にして主に仕事の相手にその生き方をぶつけるようになった、そうみちるさんに話してしまったのは失敗かな。

「うーん、私にはよく分からない感覚なんだけど…。」

心の内も全て話し切った後にみちるさんはやっぱり首を傾げる。そして自分の中で整理をしたことによって生まれた疑問を表情に出した。

少し曇った、悲しそうなものに。

「アカツキくんは私といても辛いの?」

その言葉、その表情、その声の調子で俺は相手の感情も本心も察することができる。今のみちるさんは傷ついているんじゃない。

そんな顔をして…馬鹿だな。

俺を心配して不安になっていた。

「辛くないよ。」

「でも。」

「みちるさんには気を遣わなくていいから辛くない。むしろ楽。」

気を緩めた伸びるような声で答えると彼女の様子が変わった。

あ、みちるさん気付いたかな?少しの間をおいてからの表情のゆるみ、そして頬の赤らみは期待してる証拠だ。

< 89 / 138 >

この作品をシェア

pagetop