私は彼に愛されているらしい
「みちるさんは例外だよ、全く何考えてるのか分からない。」

「うん?」

「いつもこっちが想像した範囲を軽く飛び越えて宇宙にいるから大変なんだって。」

「でも分かりやすい奴ってよく言われるけど。」

「行動はね。でも発言は全く理解できない角度からくる。言い換えれば天然だけど、これは1つの才能なんじゃないかって思うよ。」

天然という言葉に強い反応を示したみちるさんはあからさまに不満そうな顔をして口をへの字に曲げた。これは確実に誤解をしてるな。

「天然ボケってこと?」

「よく言われるでしょ。」

「言われるけど!」

納得できないと目くじらをたてて声を張り上げた。これは今まで相当悔しい思いをしてきたんだろうな。自分では認めたくないのに周りからはずっとそう言われ続けていたんだろう。

残念ながら理解できない人種を当てはめるにはちょうどいい言葉なんだよ、天然ボケって。

「でも、俺が言いたいのはちょっと違う。」

そう言って指をはじくと手元に置いたままの人参にあたって少しだけ転がった。作るつもりだった料理、でもその思いは果たされず出番待ちされている野菜たちが目に入って苦笑いが出た。

俺の計画は狂いっぱなしだ。

「…困ったな。」

「え?」

「みちるさんって不思議な人でもあるんだよね。」

振り回されて考えもしない場所に連れてこられて、結局はまた俺が懸命に考える羽目になる。不思議とそれが楽しくなってきてるんだからどうしようもないか。

新しい場所にはまた違う宿題が無造作に置かれているけど、俺の性格上、拾って解いてしまいたくなるんだから参ってしまう。

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