私は彼に愛されているらしい
結局は片桐さんのお節介だったんだよな。

でもあの人には感謝してもしきれない、ずっとこうやって陰からもみちるさんを守ってきてくれていたんだ。

結婚すればみちるさんは異動になるだろう、その先にはもう片桐さんの様な人はいない。みちるさん本人が気にするようにもう無条件で守ってもらえるような年齢でもないんだ。

それは女性でも男でもそう。

これからは一人で対応できるようにならなくてはいけない。それには鈍感すぎるみちるさんには厳しい試練だろうから俺が手助けしていこう。

この3カ月でも随分と彼女は気付けるようになっていた。

もともと周りに気配りが出来る人だ、何回も繰り返してコツを掴めば覚えて自分の物に出来るだろう。容易くはないけど彼女の理想である素敵な30歳には着実に近付けている。

「ねえ、私のこと好き？」

甘える時は分かっていても言わせたい言葉を何度も繰り返して求めてくるんだ。

「好きだよ。」

嬉しそうに抱きついては体を摺り寄せてくる。散々言わせといて、そのくせ俺には言ってくれないとか本当に小悪魔のままだ。

だから俺は態度で満たされる。

「あー、腹減った。」

「私作るよ。アカツキくんは辛めのチャーハンでしょ？」

「いいの？」

「やる気になってる時は任せたほうが得だよ。」

「じゃあ、任せます。」

俺の為に用意された香水も、俺の為に選んでくれた洋服も、俺が好きだと知れば常備してくれる食べ物も、彼女は意外と尽くしてくれる一面を持っていた。

最初こそは不安だったけど今なら自信を持って言える。

「大味だけど許してね？」

そう言って手を握ってから彼女は料理を作り始めるんだもんな。

その態度に自惚れても間違いじゃないだろ？


俺は彼女に愛されてるって。

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