私は彼に愛されているらしい
「でもさ、その前にやらなきゃいけないこと沢山あるでしょ?挨拶とか、お金とか、なにより仕事よね。一緒に暮らすと結婚話が出てくるから時期を考えないと。プロジェクトとか…。」

そして意外に現実的なところがまたツボなんだよな。

こういう場合は夢に妄想に期待が膨らんで暴走するところでしょうが。いま位はいいんだよ?

「あのさ。その前に無いの?私はこうしたい~とかっていう理想とかさ。」

「理想よりも現実のが大事でしょ?」

もう本当にツボ。今まで付き合ってきた守られたい主義の女の子とは全然違うよ、みちるさん。

「やっぱみちるさんって読めない。最高。」

「何よそれ。気付くなんて便利な機能備えてんだったら、どうやったら私がご両親に気に入られるか教えてくれる?」

「今のままで完璧です。」

神経質な人間に対して便利な機能とか普通言わないでしょ。あ、この人には普通って言葉が使えないんだっけ。

大変だなあ、この人の相手は。

「で?結婚してくれんの?」

「え?してくれないの?」

「聞いてんのはこっち。」

またこれだ。俺はまだ返事を頂けていないんですけど、そのことに気付けませんかね。

もう慣れてきた筈のペースにやっぱり振り回されて俺は呆れながらも大笑いをしてしまった。

ああ、もう負けた。一生振り回されてやるよ。

「宜しくお願いします。」

そう言って抱きついてくる反則技に俺はいつも踊らされるんだ。なんて満たされる瞬間なんだろう。

「はい。」

強く抱き寄せてこの幸せを噛みしめるんだ。

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