初恋はカフェ・ラテ色
「まだこの子は社会人になったばっかりなんでねぇ。これからいろいろと教えないとなんにもできないんですよ。まだ恥ずかしいので、お見合いはまたいつかお願いします」

断ってくれてホッと安堵する。
魚屋のおばさんは残念そうに水羊羹とあじさいの細工がされた和菓子を買って帰って行った。

「心春、お見合いしたかった?」

戸口まで見送ったお母さんが戻ると言った。

「そんなわけないでしょっ」

大好きな人がいるのに。それに知らない者同士が結婚を前提だなんて絶対にいや。

「でもいつかは結婚しないとね」
「そんなのわかってるから。あ、豆大福がなくなっちゃったね。取ってくる」

今はまだ洋輔さん以外の人と結婚なんて考えられない。

でも、結婚出来る確率はほぼないのもわかっているからつらいところ。

気分を切り替えて厨房へ行くと、お父さんはいなくて順平さんが作っていた。

「あれ? お父さんは?」
「ちょっと会合とかで……」

順平さんはいつもお父さんをかばうけれど、嘘を吐けない人だから私にはすぐにわかってしまう。

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