初恋はカフェ・ラテ色
「春?」

肯定の返事を求めるたっちゃんの瞳。危うく頷きそうになった。

「そ、それも考えとく!」

たっちゃんの深ーいため息が漏れ、無言のまま運転席を離れた。

後部座席から自転車を下ろしてくれ、門の中まで入れてくれる。

「ありがとう」
「ばあちゃん、元気?」

ふと思い出したように、たっちゃんは聞いてくる。

「うん。元気だよ。たまにはおばあちゃんの話し相手になってね」
「近いうちな。よろしく言っといて。じゃ」
「うん。おやすみ」

車に向かうたっちゃんの背中におやすみを言うと、軽く手が振られた。

静かに玄関を開けて入ると、居間にまだお母さんがいた。

「お帰り。さっさとお風呂入っちゃいなさいよ」
「ただいま。たっちゃんが送ってくれたの」
「あら樹くんが? 自転車でカフェに行ったんじゃないの?」

お母さんは首を軽く傾げて私を見る。

「たまたまカフェを通ったからって。自転車は車で運んでくれたの」
「上がってもらえばよかったのに。近くに住んでいるのに、ずいぶん遊びに来ていないわね」
「お祖母ちゃんの話し相手になってって言っておいたよ。じゃあ、お風呂入ってくるね」

 2階の自分の部屋に行き、下着とパジャマを持って浴室に向かう。

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