初恋はカフェ・ラテ色
身体をシャワーでざっと流してから湯船に身体を沈める。

「いたっ!」

擦りむいた右腕の傷が、温かいお湯に滲みてピリピリと痛い。腕を折り曲げて見てみると、小学校の頃以来の大きな擦り傷だった。

「跡が残りそう……」

湯船から右腕を出して浸かっていると、さっきのことが思い出される。

『ようは、春の好き好き光線に洋輔さんは安心しているんだよ。いつだって忠犬ハチ公みたいに慕ってくるから恋人の仲になれないんだよ。少しは男の影みせて焦らせてみろよ』

たっちゃんは簡単に言うけど……駆け引きなんて出来ないよ……忠犬ハチ公でいいじゃん。洋輔さんが好きなんだから。さっき強引に店を出てきちゃったから、洋輔さんなんて思っただろう……。

お風呂から上がって、洗面所でパジャマに着替えてからキッチンへ行く。冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを持って階段を一段上がったところで救急箱を思い出した。

居間の棚から救急箱を持って自分の部屋へそそくさと引き返す。

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