狂愛苦
 美夢は大学の後輩だった。清楚という言葉が似合う彼女は、普段警戒心の強い俺を一発で虜にした。


美夢のためになら、いくらでも好きなところに連れて行ってあげる。

美夢が喜ぶなら、美味しい料理も沢山食べさせてあげる。

もっと知りたい。君のことをもっと教えて? 


俺は口説きまくった。あらゆる手段を使って口説きまくった。メールだってLINEだって、武器になるものはなんでも使い、猛アタックした。そして一つになった俺たちは、行き着く場所は簡単だ。


――君以外はもういらない……美夢もそうだよね?

――和希、もちろん私も愛してるわ。でも夢は捨てたくないの……お願い、もうちょっと待って。


彼女の将来の夢はイラストレーターだった。


人々の心を癒すような絵を様々な商品にのせるのが望みだった。達成するまで結婚は待ってと言われた。


二兎追うものは一兎をも得ずの考えだったらしい。


美夢の虜になり、天にのぼるというより、地に堕ちてしまった俺は到底待てなかった。


愛しい人を自分のものにしたい――当然の心理じゃないか。

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