狂愛苦
 ――君の夢を身近で応援する。だからそばに居てくれ。俺の近くで夢を達成すればいいことじゃないか? 一人よりも二人。そのほうが断然叶いやすいんだよ。知ってた?


そういうと君は今まで見たこともないような最高の笑顔を見せ、ほんのりと頬を赤らめ、頷いた。


その微笑みは今も忘れられない――。


なのになぜだ? これは一体なんの冗談だ? 俺がなにをしたっていうんだ!!!!


君に不自由をさせたつもりはない。


それどころか、君は殆どの時間を自宅にこもり、夢に没頭できたはずじゃないか!


この声はなんだ? 2階から聞こえるこの声は、まぎれもなく寝室だよな? 


――あっ、あっ……ああっ!!!! んっ!


珍しく残業もなく早く帰宅してきた俺は、リビングの白いソファーで両手で髪の毛を掻き毟った。でも耳をふさぐことはしない。これは本当に妻の声なのかを、まだ疑っているからだった。


残り一ミリ。ミクロでもまだ妻を信じたかった。
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