狂愛苦
「……そうだったよね……森山さんの相談はあとでいくらでも乗るからさ、今はそっと俺の悩みを聞いてくれないか? 勝手だね。ごめん俺、わからないんだ女というものが……

つ、妻が、今この自宅で浮気の最中なんだ……おかしいだろう? 俺は一体――」


「課長!? 大丈夫ですか? 声が震えていますよ!?

……まずは思い出してください。課長は若くして仕事ができて、しかもイケメンですよ!? 自信をもって下さい!!!! そんな男に負けるはずがないじゃないですか! 

――私ならそんな相手には制裁を加えます」


「制裁……」


社内では、いつも可愛らしく微笑む彼女から、似つかわしくない低音ボイスで囁かれた。


「そうです課長。

私だって、いつの間にか裏切られてて……男の心理を課長に相談したかったんです。百戦錬磨だろうからって……

そんな課長が負けないで下さい。辛い時はいつでも私の部屋に来てください。課長なら住所をご存じですよね? 

――そして今まで見たことのない奥様の化けの皮をはがしてみてはいかがですか? 課長を裏切るなんて許せません! ……私課長のこと……」
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