一途な彼は俺様モンスター
「だからあのヴァンパイアの小僧にお前を取られた時に、自分の獲物を取られた焦りもあるが…それだけじゃなかった。惚れてる女を奪われ嫉妬してんだ…」


獲物、焦り、惚れた、嫉妬…


こいつはやっぱり間違ってる。

でも…人を愛する気持ちがあるなら、ちゃんと話してみる価値はあるのかも…





「だったら…私を解放してよ」

「え…」


私の言葉に紙神の声が変わる。





「私のことを少しでも好きなら…もう私のことを捕まえるのはやめて。空翔のところに帰して…」

「…」


黙り込む紙神。もしかして、少しは私の気持ちが伝わってるのだろうか…

そう思いながら、私は続けた。






「血ならあげるから…悪いことに使わないって約束してくれるなら、私の血なんていくらでもあげる!だから…空翔のところに帰して!お願いっ…!」


目から涙が溢れた。




これが私の気持ち…


今の紙神の言葉を告白だと解釈するなら、私の想いもちゃんとわかって欲しかったからだ。



だって…

こいつ…紙神のことは本当に憎いけど…でも、何年間か紙神と暮らしたあの日々は、全部が孤独ではなかったから…


紙神は私のお兄ちゃんとして、よくやってくれていた。

優しかったし…私はお兄ちゃんを慕っていた…


孤独と感じたのは、お兄ちゃんと2人きりだったからだけで…

お兄ちゃん自身が原因ではなかった。



あのお兄ちゃんとしての紙神は嘘だったの…?

私は、あの時のあんたを知ってる…

こんな…凶悪なモンスターじゃなかった…


だから、わかって欲しい。








「…ぶさ…けるなよ」


紙神の声が震えてる。それは泣いているわけじゃなく、怒りに震えるような声だった。





「ふざけんなっっ!なんだよそれ…結局あのヴァンパイアのところに戻るのかよ…俺の側にはいてくれないのかよっ!!!」
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