一途な彼は俺様モンスター
「…行かないの?」


不思議に思いながら空翔の顔を見ると、空翔は私をお姫様だっこしながら私をじっと見つめる。





「…せっかくだし、俺たちだけでどっか行かね?」

「え?」


BBQ…バックれる気…?




「そ、そんなの悪いよ…」

「いーじゃん。2人きりになるの久々だし、あいつらもわかってくれるだろ。もしかしたら、俺らに気を使って今日BBQにしてくれたのかも」

「え!そうなの!?」


マサシおじいちゃんがわざわざそんなことしてくれてたなんて、全然気がつかなかったよ。




「こう見えても俺ら新婚だし…それなりに新婚らしいことしたいよな?」

「ま、まぁ…」


口を尖らせる空翔を見て、恥ずかしくなった私は空翔から目をそらした。




「どうする?どっか飯食いに行くか?それとも家戻って、子作りでもいいぜ」

「バ、バカっ!」


何言ってんのよっ

新婚なのに2人きりになれなくて不満みたいなこと言ってるけど、あっちの方は結婚してから毎晩のように求めて来るくせに…!






「いいじゃん。なんならここでもいいぜ?空でヤルのはなかなかないだろ」

「絶対イヤ!」

「はいはいお姫様。んじゃどうする?」


顔を赤くしつつ、うーんと考えた私は…そっと口を開いた。












「相変わらず草がすげえな…ここに人が暮らしてたとは思えない」


辺り一面生い茂った草を見て、空翔はポツリと言った。私は「本当にね」と言って、足元に大きな花束を備えるように置いた。



空翔とやって来たのは、半年前に紙神と戦い、私の一族が昔住んでいたあの場所だった。

ここは私の両親と一族の墓場でもあるため、ずっと花を備えに来たいと思っていたのだが、紙神との戦いで空翔が大怪我を負った場所でもあるため、私にとってはトラウマのような辛い存在になっていた。心の整理をするのに半年かかり、ようやく今日来ることが出来た…

この場所に来ることは少し不安ではあったが、来てよかった。心がスっと軽くなる…





「大丈夫…?」


空翔が優しく私の肩を抱き、自分の胸に引き寄せる。



「うん…平気…」


私が空翔にそっと抱きつくと、空翔は私の背中に腕を回した。




大丈夫…空翔が居るから…


心で何度も同じことを想った。





辛いこと、悲しいことは確かにあった。

本気で死んでしまいたいと思ったこともある…

自分の体に流れる血が憎くて、自分が大嫌いになったことも…


でも、空翔がいてくれたから…いつも1人じゃなかったから…

今の私があるんだ。
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