一途な彼は俺様モンスター
「知らね。なんか穴場があるらしい…だから、片付けたらしたくしとけよ」


空翔はそう言って、診察部屋のドアを閉めた。




「BBQだって…春の夜にやるってどうなの?」

「ふふ。BBQってゆうより、夜だとキャンプみたい…」


苦笑いをする真由子さんと、クスクスと笑う私。片付け終わると、私たちは着ている白衣を脱いで部屋を出てリビングへ向かうと、空翔たちが準備を終えて待っていた。




「お疲れさん。今日も忙しかったの…」


タバコをくわえたマサシおじいちゃんが、優しく微笑んだ。最近はマサシおじいちゃんはよく遊びに来るようになり、私に医療を教えてくれたり、こうして家の家事をやってくれたりしてくれている。





「うん。でも嬉しい…一人でもモンスターが助かってくれると嬉しいし」

「そうだな…」


私の言葉に、リビングにいる全員が微笑んでくれた。ここにいるみんなは、私の仲間…そして家族。




「んじゃ、そろそろ行くか」

「またあの台車に乗るのか?」


大きな荷物を持ってベランダに出ると、楓雅が嫌な顔する。




「乗るのはワシと荷物だけじゃ。お前らはおなごを抱えて飛んでけ」

「良かった♪」

「ボクも飛びますよー」


マサシおじいちゃんにホッとする楓雅と空翔。バネちゃんは張り切って腕を上げた。





「現地で会おう。場所はわかるな?」

「ああ」

「バネ。お前はワシの前に飛んで、明かりを灯してくれ」


先に台車に乗り込んだおじいちゃんの頼みを、嬉しそうに返事をしたバネちゃんは、手持ちのランプを持ってベランダから空に飛んで行った。バネちゃんの明かりにおじいちゃんの乗った空飛ぶ台車はゆっくりと着いていく。





「行くぞ真由子」

「うん!」


楓雅と真由子さんも、空に飛んで行く。





「つかまって」

「え、あ…うん」


楓雅たちをぼーっと眺めていたら、空翔に声をかけられ慌てて空翔につかまる。

空翔は黒い羽をスッと出し私を抱えると、勢い良く空へ飛び立った。春だからか風が強く、生ぬるい風が体に当たる。





「ベランダから出かけてるのって、俺らくらいだよな?」

「ふふ、そーだね」


空に浮かびながら、空翔と2人でクスクスと笑う。楓雅と真由子さんはどんどん先に飛んで行ってしまっているのに、その場から空翔は動こかず、ただ空に浮いているだけ…
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