愛しい君～イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい～

　だが、奴はムカつくほど余裕の表情でそんな私を見た。

「その薬指、空けておけよ」

「はあ？意味わかんない」

　私は平静を装って誤魔化したけど、いま思えばあれは誉なりの本当のプロポーズだったのかな？

　それから、誉は私の前から姿を消した。

　ずっと待っていたのに、奴からはメールも電話もなかった。

　自分は誉の連絡先を知ってたけど、下手なプライドが邪魔して連絡出来なかった。

　その状態が５年以上続いた。

　だから、誉の事は忘れようと思った。

　誰にも頼らず１人で生きていこうと思った。

　家も出た。

　兄には内緒で一人暮らしも始めた。

　派遣だけど、何とか生活できる仕事も見つけた。

　でも、結婚はしない。

　他の男性には全く関心が持てなかったから。