愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
 甘い柑橘系の香りが私を包み込む。

 見なくても誰だかわかる。

「お前、何泣かしてんの?」

 後ろを向くと、そこには片山くんをちょっと睨んでいる誉の顔があった。

「不可抗力です。怒らないでくださいよ。それに、愛しの姫を慰めるのは王子の役目でしょう?」

「お前も言うね」

「GPSだって役に立ってるでしょう?こんなに早く瑠璃さん見つけてるんですから」

 片山くんはちらりと私の胸のペンダントを見る。

 ああ、これのお陰で私達の居場所がわかったのか。

 でも、そんな事より……。

「ねえ、あのケーキ、私のためだったの?」 

 私が誉を見上げると、彼はコクリと頷いた。

「ずっとクリスマスにホールのケーキ食べるの憧れてただろ?俺は約束は必ず守る」

「・・・約束・・・」
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