大っ嫌いなアイツに恋をした。

プルルルル──プルルルル


携帯を持つ手が震える。


お願い……っ

出て…！



しばらくして機械アナウンスが聞こえてくる。



ああ、ダメだ。


そう、諦めかけたときだった。



「………笹原？」



いつもより優しい声がした。


────橘。

橘の声を聞いた瞬間、涙が零れそうになった。



「…たちば、な…助け…」



今起こっている状況を説明しようとしても震えて何も出てこない。



「お前、今どこだよ」


少し焦ったような橘の声がする。



「南町の神社…」



「……そこから絶対動くな」



そう告げた電話の向こうからはドタドタと慌ただしい音がする。



「俺が着くまで電話切るんじゃねぇぞ」