大っ嫌いなアイツに恋をした。



相当走ってここまでやってきたのだろう。

乱れた呼吸をしたままガツガツと足音を立ててあたしに近づいてくる。



「ったく…お前ってヤツは…っ」



怒っている物言いにあたしはドキッとして目をつぶる。


もしかして、殴られる!?



覚悟していたとき、ふわっと壊れものを扱うように抱き寄せられた。


「……た、ちばな、?」



「……心配させんなよ、バカ」



そう一層抱きしめる力を強くする。


橘の暖かい温もりに涙が溢れそうになった。


「怖かったろ。泣いていいぞ。その代わり、俺から離れんなよ」



橘はあたしの顔を隠すように自分の胸に抱き寄せた。


何だよ、バカ。


そんなこと言われたら…


既に溢れていた涙はもっと溢れ出し声に出して泣いた。


本当は怖かった。

男なんて…とナメていたあたしにいつも注意してくれていたのは橘だったのに。



自分の不甲斐なさと橘が来てくれた安心で涙が止まらなかった。




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