ブンベツ【完】


そんな忠告を言い残してカイさんは濡れた頭を首のタオルでゴシゴシ吹きながら部屋を出て行った。

だけどそれは服を取りに行ったらしくすぐまた戻ってきた。

さっきと同じ場所に座ると、私が買ってきたパンを齧りながら何でもなかったかのようにテレビを見始めて、それ以上は何も言ってくることはなかった。


私はなんて言ったらいいのか緊張の糸がピンと張ったみたいに落ち着きを取り戻せなくて。

からかわれたって分かってるけど、あんな“男”を強調させるような言葉を吐かれたんじゃ落ちついてはいられない。

カイさんからして私は隙だらけらしいけど、そんなことした覚えはないしカイさんに色目なんて使った覚えもない。


まだ朝だっていうのに何でこんなことで頭を悩ませてるんだろう。

ていうか冷静に考えて、カイさんみたいな人が私なんかに手を出すはずがないし。

年下で全然可愛くない私なんかがカイさんを欲情させるなんてこと、多分いくら大人になっても一枚上手のカイさんに勝てるはずがないんだ。

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