私と彼と――恋愛小説。
「――それは聞きにくいなぁ」


「聞かなくても大丈夫。満足してる…」


「えっと…今更だけど彼氏とか居ないよね…」


「私が聞きたいぐらい…佐久間さん、周りに良いオンナが沢山居るしね」


「佐久間さん…せめて涼って読んで欲しいなぁ。それに、周りの良い女って?」


「女優のエリナ…とか。佐久…涼さんのファンだって、ジュンさんが言ってたし。逆立ちしても勝てる気がしないわよ」


「もしかして、妬いてくれてたりするのかな。それは嬉しい」


十センチも離れていない場所に、佐久間の嬉しそうな笑顔がある。


「少しだけね…」


そう言って拗ねたふりをする私を佐久間が抱き寄せる。


「エリナねぇ…仲は良いけど、それだけだよ」


「仲が良いんだ…」


佐久間は笑いを堪えながら聞き返す。


「それは、僕がエリナと寝たかって聞きたいのかな?」


過去の事など気にするわけじゃない。けれども、女から見ても魅力的な彼女と比べられるのが嫌なだけだ。


「意地悪…そうよ。比べられたら嫌だもの」
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