くれなゐの宮
――おれが再び紅ノ間に通されたのは、夜も更けた頃だった。
「待っていたぞ。」
ここにいるのはおれと、神だけ。
宮女たちは部屋の外にいる。
神―シキガミは、怖ろしいほどに濃い、紅色の髪と瞳を持っていた。
こんな人間を見るのは初めてだった。
顔立ちも自分たちと似ているようで…どこか違う。
掘りは深くはないが、それを差し引いても美人であることには変わりはない。
「チサト…と言ったな。」
「はい、シキガミ様。」
「そんな堅苦しくせずとも良い。それとシキガミと呼ばれるよりは、イロヒメと呼ばれた方がまだいいな。」
「…承知いたしました、イロヒメ様。」
彼女は堅苦しさを崩せずにいるおれの態度を眺め、笑ったが、どこか寂しそうに瞳を伏せた。