くれなゐの宮
「折角来てもらって悪いが、今日は特にやる事もない。…何か質問があれば受けよう。」
はらりと手で髪を分ければ、紅色が月の光に照らされてよく映える。
おれは息を呑み口を開いた。そして問う。
「ひと月後、本当におれは殺されるのですか。」
その問いに、彼女は酷く複雑な表情を浮かべた。
しかしそれはほんの一瞬で、すぐに冷静さのある表情に戻ると、淡々とした口調で告げる。
「神を見た、その時点でお前は大罪人だ。例え私との面会をお前が望んでいないとしても。」
「………。」
「…お前の境遇は言わずとも分かる。だが、この国にいる限り…どんなに理不尽なことであろうと、それは善だ。
許せ、チサト。」
彼女はおれの瞳を真っ直ぐに見つめ、言った。
逃れられない、神からの死の宣告だった。