くれなゐの宮

そう、イハルに視線を移した時だった。


ふいに大きく地を蹴る音がして、黒い影が灯りを遮った。

思わず顔を上げれば、イハルと同じように頭から布を被った女性が赤提燈を背に佇んでいて。

彼女は両手に乳児を抱きかかえたまま、目を見開きわなわなと震えだした。


「ユト!」


そして息を整える間もなく…涙を浮かべ叫ぶ。

途端、女性に向かって駆け出すユト。


「おかあさん!」


「ああっ、ユト…無事でよかった…」



その様子から悟るに、この人はユトの母親で違いないだろう。

抱きしめあうその姿を見て、安心したおれ達は立ち上がると、二人の側へと歩み寄る。

母親は警戒しているようだったが、ユトから話を聞くなりすぐに感謝の言葉を並べた。


「本当にありがとうございました…!」


「いえ、おれ達は何も…。」


「お母さんと会えて良かったな、ユト。」


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