くれなゐの宮
宮人長の妙に改まった挨拶で、宴が始まった。
酒や料理が運ばれてくる中、舞台では優雅に楽が奏でられ…隣に座る王は静かに私の方を向く。
「久しいですな、イロヒメ様。」
「貴殿も変わりなく。」
「いやはや、布越しとはいえ貴女は麗しい。いや、いつもに増して…か。」
「またまた、お戯れを。」
「はっはっは、本当のことではないか。
ああ、そうだ。先日、南の方へ遠征に行きましてな…」
長い長いお話。
湖の畔の星空は綺麗だとか、あそこの料理はおいしいだとか。
云々云々。
私に縁もゆかりもない話を、つらつらと。
一口、また一口と、酒を口に含む王。
その度に酒の匂いが増す。