深海家奇譚
今で言う日本海に面したところに美波(みなみ)という国がございました。
そこは海の幸にたいへん恵まれ、人びとは海と豊かに暮らしておりました。
しかし、海は豊かさをもたらすだけではなかったのでございます。
美波の国は水害も多い国でございました。
年に何度かやってくる台風によって、美波の国は大きな津波に襲われたのでございます。
それはそれはひどいものでございました。
田や畑、牛馬や家屋、そしてそこに住む人びとのいのちを、
津波は容赦なくさらってゆくのでございます。