深海家奇譚


それを聞いて百合の顔はサッと青ざめた。

「父上がお戻りになるのですか?!急ぎ御迎えの準備を致さねば!!
じい、湯殿と馳走の準備を。城下の臣下にも早う伝えるのじゃ!」

「ははッ!」




百合の父の深海家藩主、深海鯨達(げいたつ)はここしばらく美波を離れていた。

近隣国の動向を調べつつ、和睦を結んだり、都へ海産物を売り込んだりするためであった。



美波の国の近隣は今のところ穏やかだが、戦国の世はなにがあるか分かったものではない。


定期的に近隣国との親睦を深めておくことも重要であった。


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