深海家奇譚
ーーだが、歴史上何度か深海家に世継ぎがいない間があった。
そのような場合、深海家の縁者から姫巫女が選ばれる。
多くは、力を持たない飾り物の姫巫女であった。
飾り物の姫巫女を人柱にしても津波が静まった試しはなく、力を持った姫巫女が絶えた代の国は荒れに荒れた。
しかし力を持たない姫巫女でも産んだ子は力を持って生まれることが多く、なんとか今日まで深海家は存続してきたのだ。
深海家が絶える時こそ、美波の国が滅ぶ時。
それが分かっているからこそ、百合は何も言わなかった。
ーー否、言えなかったのだ。