深海家奇譚







ーーダンッ!

バンッ!ーバンッ!ーバンッ!


この深海城で足早に襖(ふすま)を開ける音が響いていた。




「姫さま!百合(ゆり)姫さまはどこじゃあ!ーーまったく、大事な御身、少しはわきまえて頂きたいものよのォ!」


この白髪混じりの頭をがしがしと掻いている初老の男こそ、深海家老中兼教育係、
岬平目十郎(みさきだいらもくじゅうろう)という。



「じい、此処におります。」



城の廊下に凛とした声が響き渡った。





< 6 / 29 >

この作品をシェア

pagetop