誘惑~初めての男は彼氏の父~
 私は袋から取り出し、作品を眺めてみた。


 水無月さんの写真が、ポストカードサイズで十枚ほど入っていた。


 北海道内の風景写真と、動物の写真。


 「あれ、この写真・・・」


 エゾリスがドングリを頬張っている、秋の野山のワンシーン。


 どこかで見たことがある。


 どこでだったかな・・・。


 「・・・」


 思い出した、自宅の居間に貼られている。


 購読している新聞販売所が毎年、年始の挨拶に持参する、新聞社特製のカレンダー。


 北海道内の風景や動物が月単位で楽しめるカレンダーなのだけど、その撮影者が「水無月和仁」だ。


 雄大な自然から、ほのぼのとした動物たちの姿まで、幅広い世界を描き出すカメラマンとして、道内では結構知られた存在。


 「自然の撮影の他に、オファーがあれば地元開催の野球やサッカーの試合を撮影することもあるんだよ」


 「すごいです」


 ますます私は、水無月さんの写真の話に熱中した。


 勉強とバイトに明け暮れていた、地方の平凡な高校生の私にとっては、水無月さんの仕事がとても輝いて見えた。
< 12 / 433 >

この作品をシェア

pagetop