誘惑~初めての男は彼氏の父~
 それからログハウスを出て、ホテルまでの小道を手を繋いで歩いて。


 まず温泉に入り、それから同じフロアにあるレストランで朝食。


 佑典とテーブルで向かい合うと、夕べの記憶が甦ってきてどうも恥ずかしくなってしまい、うつむきがちになってしまう。


 今まで知らなかった、佑典の一面を知ることができたのと同様に。


 ずっと隠していた私の本性の一片を、さらけ出してしまった。


 私は佑典が思ってるような人間ではないのかもしれない。


 「はい、理恵」


 ぼーっと考えごとをしていたら、佑典が私のグラスにオレンジジュースを注いで持って来てくれていた。


 いつの間にかグラスは空っぽになっていた。


 「あ、ありがとう」


 私の必要とすることを、一瞬早く察知して先回りしてくれる人。


 グラスを手渡す際の仕草や指先、微笑が和仁さんによく似ていて・・・。


 外見はそんなに似ているわけではないとはいえ、仕草の節々に面影を感じてしまう。
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