誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「佑典・・・」


 そこまで私のことを考えてくれて、嬉しい気持ちもある。


 だけど佑典は誤解している。


 私が抱かれることを望むのは、孤独ゆえばかりとは限らない。


 そばにいてくれないと、不安でたまらないのも事実。


 それに加えて・・・。


 一瞬だけでもいい、何もかも忘れてしまいたいという衝動が抑えられない。


 「もうそんなこと、考えなくていいから」


 「理恵・・・」


 私は両腕を佑典の首に回した。


 「こうしている時は、現在(いま)の私だけを感じていて」


 こちらから唇を重ねた。


 「理恵がそう望むのなら」


 強く抱き返された。


 身体を包んでいたバスタオルが零れ落ち、肌と肌が触れ合う。


 唇を重ね合い、肌に触れられている間は、高まる感情を覚えるのに。


 一つになり、私のさらに奥を求められると・・・得られるものは痛みだけ。


 (どうして・・・)


 またしても私は、心と一致しない身体にもどかしさを抱えながら、佑典を受け入れていた。
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