誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・留守中に私が、佑典と一線を越えたことを悟った和仁さんは。


 私の中からその記憶をかき消すというか、自分の色で上書きしてしまうことを望んだのか。


 私の全てを壊してしまおうとした。


 「・・・」


 汗などで濡れた身体を持て余しながら、私はシートから身を起こし、両手で顔を覆った。


 乱れた衣服もそのままに。


 「後悔してる?」


 繰り返し身体を許したことで、私が今になって突然罪悪感の嵐に襲われたと思ったらしい。


 「全部、僕のせいにしていいよ・・・」


 再びこんな関係に陥ったきっかけは、夜の浜辺の寂しさに耐えかねた私が、衝動的に和仁さんを求めたから。


 策略だった疑いが拭いきれないけど、結果的に私のほうから和仁さんに抱かれることを望んでいた。


 それを大義名分に、関係を重ねるたびに「最初誘ってきたのは、君のほうだ」と繰り返され、常に主導権を握られていた。


 ところが今になって。


 自分が悪者になってもいいと言い出した。
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