誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・。


 「僕がカメラに目覚めたのは、中学生になった頃かな」


 行きの車の中・・・この日は例の外車ではなくハイブリッドカー。


 静かな車内で、和仁さんは自らの写真との馴れ初めを語り始めた。


 「当時はまだ、カメラなんて一家に一台。ていうか家宝みたいなもので、写真を撮るのも何か記念のイベントがあった時くらいだったかな」


 カメラは今よりずっと高価で。


 フィルムに現像代、プリント代もばかにならない。


 子供が気軽にシャッターを押しまくることが、可能な時代ではなかったようだ。


 「修学旅行の際も、カメラ持参禁止だったんだよ」


 「えっ、どうしてですか」


 「今よりはるかに高額な機器だったからね。子供に持たせて忘れたり、窃盗にあったりしても、学校も責任取りたくなかっただろうしね」


 私の修学旅行の際はみんな、コンパクトデジカメを持ってきたし。


 それか携帯電話のカメラで、たくさん記録に残せた。


 和仁さんの時代は、まだまだカメラが高級アイテムな時代で。


 親が気軽に子供に与えるようなことも稀だった。
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