誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「気になる?」


 予想外の発言に動揺を隠せない私を楽しむかのように、和仁さんが私の表情を覗き込む。


 「いえ。ただ和仁さんがヌード撮影だなんて、びっくりしただけで」


 「商用では初めてのチャレンジになる。これで新境地開拓となるか、重大な瀬戸際だ」


 「新境地開拓、ですか」


 これで成功すれば、第二、第三のオファーが舞い込んでくる可能性は高い。


 次から次にと和仁さんは、艶かしい女性の裸を「芸術」の名の下に・・・。


 「理恵のは絶対に、撮らないからね」


 運転中ゆえ前方を見たまま、和仁さんはこう口にした。


 「え、何言ってるんですか。私ヌードなんか」


 「理恵を大衆の好奇の眼差しの前に晒すなんて、無理だから」


 「当たり前です。こっちだって無理です」


 「理恵は僕のプライベートであって、見世物にはできないから」


 「第一私のヌード写真集なんて、買う人いるわけないじゃないですか」


 「いや・・・。彼氏と、あとよこしまな欲望を抱く男どもが、こぞって買いに来ると思うよ」
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