誘惑~初めての男は彼氏の父~
 私も何となく、空を舞うカモメの軌道を見守り続けた。


 すでに秋の空、夏よりも高く遠く感じられる。


 手の届かない場所を、自由に羽ばたいているその姿が印象的で。


 私もふと、撮ってみたい気持ちになった。


 「そうだ、携帯電話で」


 バッグの中から携帯電話を取り出した。


 デジカメは持参していないので、これが唯一の撮影道具。


 「えーと・・・」


 カメラ機能の使い方が、よく分からない。


 ブログをやっている友達などは、食事のメニューから何もかもを撮影して、ウェブ上にアップしている。


 そのようなものに興味のなかった私は、携帯電話を使って撮影するという習慣がまるでなかった。


 だけど今。


 一心不乱に撮影を続けている和仁さんの姿を見守っているうちに、私も真似したくなってしまったのだった。


 「これかな?」


 メニューボタンの真ん中にあるカメラマークを選択してみた。


 するとプレビュー画面が広がった。
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