誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・いつもいたずらばっかり」


 じゃれるのも一段落した隙に、携帯の電源を切り、脇の棚の上に置いた。


 「理恵がこんな時でも、彼氏のことを考えているからだ」


 「私、そんなこと・・・」


 全く気にしていないといえば嘘になる。


 常に後ろめたさからは逃れられない日々。


 「だって、すぐに和仁さんが、佑典の名前口に出すから」


 「やっぱり気になるじゃないか。あいつの腕の中で君が、どんなふうに感じているのかって」


 「私は・・・」


 「それに、あいつの目を気にしながら続けなきゃならないのも、少し悔しいかな。本来は僕のほうが先なのに」


 佑典と出会う前に、すでに私は和仁さんとこういう関係に。


 「先に・・・理恵と出会って手に入れたのに」


 あの頃の私は若すぎて、現状を受け止めることができず、怖くなってこの人の元から逃げ出した。


 あれから三年。


 もう繰り返してはいけないことだったはずなのに、罪悪感を抱えながらも私はあやまちを重ねている。
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