誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・。


 「抱けば抱くほど欲しくなる・・・」


 開かれた窓から、海風が迷い込んでくる。


 夜風に肌を晒し、両腕の中で和仁さんを感じながら・・・私は再度唇を重ねた。


 「もう離れられない」


 それは私も同じ。


 倒された助手席のシートに身を横たえ、今まで全身で和仁さんを受け入れていた。


 まだ余韻で体が甘く揺れている。


 「・・・今日は話があるんじゃなかったかな」


 ようやく体は離れ、抱き合う前に外したネクタイを和仁さんは再び締めている。


 大学で噂になっていることが不安で耐え切れず、半ば強引に和仁さんを呼び出した。


 車まで指定して。


 予定の会った和仁さんは帰り道、スーツ姿のまま私を迎えに来てくれた。


 そして話し合う場所を探しているうちに、懐かしい海辺にたどり着いて、こんな・・・。


 「噂している人がいるんです」


 乱れた服を整えながら、私は口を開いた。


 「噂?」


 ネクタイを締める手を止めて、和仁さんは私のほうを見た。


 「私が・・・援助交際してるって」


 「援交? ・・・まさか、僕と?」


 私はそっと頷いた。


 「佑典にも知られたの?」


 「車種から和仁さんのことだって勘付いたみたいです。でもただ送ってもらっただけだって信じていて。それを見た誰かが邪推しただけなんじゃないか、って」
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