誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「ただ、これだけは事実だよ。・・・いつまでもこのままではいられないこと」


 私に抱きつかれたまま、和仁さんは静かに答えた。


 それは最初から分かっている。


 「分かっていてもなお・・・再会後、戸惑う私を半ば強引に奪ったのは、和仁さんじゃないですか・・・」


 確かに最初はそうだった。


 再会の時、すでに私は佑典と付き合い始めていて。


 よりを戻すのはまずいと、和仁さんからの誘いを拒絶するつもりだった。


 でもできなかった。


 そのままズルズルと一年以上・・・。


 時が経つにつれて、私たちの関係にも少しずつ変化が生じていた。


 ただ誘われ流されるだけだった私が、今では自分から求めて・・・。


 「もしも理恵が望むのなら。世間の冷たい目など、撥ね退けることさえ僕は可能だ。たとえ息子を、永遠に失うことになろうとも」


 私が佑典と別れ、和仁さんとの仲を公にしたら。


 息子の彼女を略奪したとして、和仁さんは周囲にあれこれ言われるのは間違いない。


 写真家としての活動に、影響が出ないとも言い切れない。


 そして息子の佑典は、私とそして実の父親の和仁さんを軽蔑し切って、そのまま去っていくと思う。
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