誘惑~初めての男は彼氏の父~
***


 この頃までに、佑典の教員採用試験の合否が明らかになっていた。


 合格。


 これで卒業後の進路も決まり、めでたしめでたし・・・。


 ・・・というわけではなかった。


 採用試験は、成績上位者から順に採用が確定していくらしい。


 実は佑典は筆記試験でヤマが外れ、合格者の中では下の方の成績。


 合格水準ギリギリだった。


 それゆえ成績順の合格者名簿では、かなり下に位置していた。


 最悪のケース、最下位者あたりになるとずっと待機させられたまま、採用まで至らないケースもあるとかないとか・・・。


 佑典はかなり本気で心配していた。


 「まさか。最下位なんてことはないんじゃない? もうちょっとの辛抱だよ」


 私は近いうちに採用通知が来るだろうと、楽観視していたのだけど。


 「まだ通知が来ないなんて・・・まずいよ。このままだったら俺は・・・」


 「佑典・・・」


 佑典は私をきつく抱く。


 早く独り立ちしたいと願う佑典にとって、赴任先がなかなか決まらないという現実はこの上ない苦痛だった。


 加えて卒業論文執筆のプレッシャーもある。


 私たちは冬の空色のような、どんよりとした毎日を過ごしていた。


 暗い気持ちから逃れたくて、私は時折和仁さんと会っていた。
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