誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・佑典はオーケストラ部のほうは、卒業論文提出まで活動縮小させている。


 完全に休んでしまうと、楽器を奏でる腕前が衰えてしまうので、毎日のトレーニングと練習は続けて。


 週に数度は部に顔を出している。


 部室で佑典の登場を待ちわびているのは、佑典に想いを寄せる内村さん。


 全然あきらめる気配はないらしい。


 私があの後行動を慎んでいるので、援助交際の噂は下火となった。


 他の攻撃するためのネタを探しているようだけど、上手い具合には見つからない。


 それがますます内村さんの私に対する嫉妬心を煽り、相変わらず陰で悪口を言っているらしい。


 「佑典さんが教員採用試験で実力を発揮できなかったのは、付き合っている人が足を引っ張っているからだ」などと。


 私の私生活に関する悪い噂が、佑典の集中を妨げ、悪い結果をもたらした・・・と。


 あまりにひどい言いがかりだと憤慨しつつも、私と和仁さんとの疑惑が佑典を苦しめたのもまた事実なので。


 一方的に内村さんを責められない。


 そして私はまた、罪悪感に苛まれる。


 ・・・そんな矢先だった。


 佑典は卒業後の進路について、予想もしなかったことを独りで勝手に決めてしまい、私に事後報告してきたのだった。
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