誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・。


 「・・・個室露天風呂だから、入ってきなさい」


 「はい」


 「一緒に入ってもいいけど」


 「・・・遠慮しておきます」


 「冗談だよ」


 和仁さんは笑いながらベッドに留まり、タオルケットに包まりながら携帯電話をいじっていた。


 私は一人ベッドを離れ、バスルームに置かれていたグッズを持って来て、バルコニー部分にある客室露天風呂に向かった。


 一人露天風呂に浸かり、夜の函館の街並みを眺める。


 和仁さんが来たがっていた函館に、休みを利用して訪れた。


 まだ冬の終わりで雪が残っていて、冬枯れの木が立ち並ぶ殺風景な観光地。


 観光シーズンではないので、どこに行っても閑散としていた。


 しかも粉雪が舞っていて、寒い。


 ・・・初めて客室露天風呂に入ってみた。


 露天風呂のある部屋は、割高。


 友人同士や佑典と旅行する時だったら、とても手が出せないエリア。


 しかも高層階なので見晴らしがよく、夜の街の灯りが煌めいて見える。


 湯船に浸かりながら、深呼吸をした。


 あと一年。


 あと一年の間私は、役割をそつなくこなせることができるのかな・・・?
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